企画業務型裁量労働制(以下、企画型)とは、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、業務の性質上、これを適切に遂行するには、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、業務遂行の手段や時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務等について労使委員会で決議し、労働基準監督署に決議の届出を行い、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使委員会の決議であらかじめ定めた時間労働したものとみなす制度です。
企画型に関してIPO準備企業で法令違反が生じやすいのは以下の点です。
□ 対象業務または対象労働者の範囲が法令上の要件を満たしていない
□ 対象労働者本人の同意を適切に取得していない、または同意の撤回手続を整備していない
□ 労使委員会を6か月以内ごとに1回以上開催していない、または議事録・各種記録の作成、周知、保存が適切に行われていない
企画型の導入にあたっては、労使委員会の設置、委員の5分の4以上の多数による決議、決議事項の所轄労働基準監督署長への届出、労働者本人の同意の取得などが必要です。要件を満たさない場合には、みなし労働時間制の効果が生じず、実労働時間に基づいて賃金を再計算する必要があるため、未払賃金が発生する可能性があります。
自社の運用を確認し、IPO審査に耐えうる労務管理体制を構築してください。
01.対象業務
企画型の対象業務は、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をしないこととする業務をいいます(労働基準法第38条の4)。
企画、立案、調査および分析の業務とは別に、たとえ非対象業務が短時間であっても、 それが予定されている場合は、企画型を適用することはできません。
対象業務となり得るものは、以下の①~④までの全ての要件を満たす業務です。ホワイトカラーの業務すべてが該当するわけではありません。要件が1つでも欠ける場合は、労働時間のみなしの効果は生じないことに注意してください。
要件① 事業の運営に関する事項についての業務であること
(〇 該当する業務の例)
・本社における企業全体の事業戦略や特定の製品についての企業全体の事業戦略の策定
・各支社におけるその支社のみの事業戦略の策定
・各工場における特定の製品についての海外における事業戦略の策定
(× 該当しない業務の例)
・本社や各支社における個別の営業活動
・各工場における個別の製造作業やその工程管理
要件② 企画、立案、調査及び分析の業務であること
「企画」、「立案」、「調査」及び「分析」という相互に関連し合う作業を組み合わせて行うことを内容とする業務をいい、ここでいう「業務」とは、部署が所掌する業務ではなく、個々の労働者が 使用者に遂行を命じられた業務をいいます。したがって、対象事業場に設けられた企画部、調査課等の「企画」、「立案」、「調査」又は「分析」に対応する語句をその名称に含む部署において行われる業務の全てが直ちに「企画、立案、調査及び分析の業務」に該当するものではありません。
要件③ 当該業務の性質上これを適切に遂行するにはその業務遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務であること
要件④ 当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること
「時間配分の決定」には、始業及び終業の時刻の決定も含まれるため、使用者から始業又は終業の時刻のいずれか一方でも指示されている業務は企画型の対象業務に該当しません。また、業務量が過大である場合や期限の設定が不適切である場合には、労働者の時間配分の決定に関する裁量が事実上失われることがあるため留意が必要です。
(〇 対象業務となり得る業務の例)
・経営企画を担当する部署における業務のうち、経営状態・経営環境等について調査および分析を行い、経営に 関する計画を策定する業務
・財務・経理を担当する部署における業務のうち、財務状態等について調査および分析を行い、財務に関する 計画を策定する業務
(× 対象業務となり得ない業務の例)
・経営に関する会議の庶務等の業務
・金銭の出納、財務諸表・会計帳簿の作成および保管、租税の申告および納付、予算・決算に係る計算等の業務
関係法令
- 労働基準法 第38条の4
リーフレット等
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なお厚生労働省のリンク先ページが移動・削除されている場合、「国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)」のページに過去の資料(アーカイブ)として掲載されている旨の案内が表示されることがあります。その場合は、案内先より過去の資料をご参照ください。
02.労働者の同意
企画型を労働者に適用するに当たっては、労働者本人の同意を得なければなりません(労働基準法第38条の4第1項)。使用者は、以下の内容を明示して説明してください。
①対象業務の内容や決議の有効期間を始めとする決議の内容等、制度の概要(みなし労働時間を含む)
②同意した場合に適用される賃金・評価制度の内容
③同意をしなかった場合の配置および処遇
また、労働者本人の同意を得るにあたって、留意点は以下のとおりです。単に形式的に同意を得るのではなく、労働者が十分に理解、納得できるよう丁寧に説明してください。
①就業規則による包括的な同意は、「個別の同意」に当たりません。
②労働者本人の同意については、口頭のみではなく、書面や電磁的記録など確実な方法で取得することが適切です。
③制度の概要等の説明についても、口頭のみではなく、書面や電磁的記録を用いる方法により説明することが適切です。
関係法令
- 労働基準法 第38条の4
リーフレット等
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03.労使委員会の決議
企画型を導入するには、対象となる各事業場において労使委員会を設置し、委員の5分の4以上の多数により、必要な事項を決議する必要があります。使用者は、労使委員会の開催の都度、議事録を作成し、作業場への掲示等により労働者に周知するとともに、原則として開催日から3年間保存しなければなりません。ただし、決議が行われた会議の議事録については、決議の有効期間満了日から起算して3年間保存する必要があります。
<労使委員会の設置>
・労使委員会は、労働者を代表する委員と、使用者を代表する委員で構成されます。人数については、労働者代表委員が半数を占めていなければなりません。ただし、労使各1名の計2名からなるものは、労使委員会として認められません。
・使用者代表委員は、使用者側の指名により選出されますが、労働者代表委員は、各事業場の過半数労働組合または過半数労働組合がない各事業場においては過半数代表者から、任期を定めて指名を受けなければなりません。使用者は、労働者が委員であること等を理由として不利益な取り扱い(※)をしてはなりません。
(※)解雇、賃金の減額、降格等の労働条件についての不利益な取り扱いが考えられます。
労働者代表委員の指名について、過半数労働組合がない各事業場においては、まず、労使委員会の労働者代表委員を指名する過半数代表者を投票、挙手等の方法により選出してください。過半数労働組合または過半数代表者は、管理監督者以外の者の中から、使用者の意向に基づかずに、労働者代表委員を任期を定めて指名します。
使用者の意向に基づき選出されるなど過半数代表者が適正に選出されていない場合や、労働者代表委員に 管理監督者が指名されている場合には、労使委員会の決議は無効となります。
<運営規程の作成>
労使委員会の招集、定足数、議事その他労使委員会の運営について必要な事項を規定する運営規程を作成してください。運営規程の作成および変更に当たっては、労使委員会の同意を得ることが必要です。規定しなければならない事項は以下のとおりです。
1 労使委員会の招集に関する事項
①定例として予定されている委員会の開催に関すること
②必要に応じて開催される委員会の開催に関すること
2 労使委員会の定足数に関する事項
①全委員にかかる定足数
②労使各側を代表する委員ごとに一定割合または一定数以上の出席を必要とすること
3 労使委員会の議事に関する事項
①議長の選出に関すること
②決議の方法に関すること
4 対象労働者に適用される賃金・評価制度の内容の使用者からの説明に関する事項
①労使委員会に対して説明を行う賃金・評価制度の項目
②労使委員会に対する説明を決議の前に行うこと
5 制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項
制度の実施状況の把握の頻度や方法
6 開催頻度を6か月以内ごとに1回とすること
7 その他労使委員会の運営について必要な事項
①使用者が労使委員会に対し開示すべき情報の範囲、開示手続および開示が行われる労使委員会の 開催時期
②労働組合や労働条件に関する事項を調査審議する労使協議機関がある場合には、それらと協議の上、 労使委員会の調査審議事項の範囲についての定め
③労使委員会が労使協定に代えて決議を行うことができる規定の範囲についての定め
<労使委員会での決議>
労使委員会では、以下の決議事項について、委員の5分の4以上の多数により決議することが必要です。決議内容を含む労使委員会の議事録は、法令に従って保存し、作業場への掲示等により労働者に周知しなければなりません。
①制度の対象とする業務
②対象労働者の範囲
③1日の労働時間としてみなす時間(みなし労働時間)
④対象労働者の労働時間の状況に応じて実施する健康・福祉確保措置の具体的内容
⑤対象労働者からの苦情処理のために実施する措置の具体的内容
⑥制度の適用に当たって労働者本人の同意を得なければならないこと
⑦制度の適用に労働者が同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしてはならないこと
⑧制度の適用に関する同意の撤回の手続
⑨対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うこと
⑩労使委員会の決議の有効期間(※3年以内とすることが望ましい)
⑪労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況、苦情処理措置の実施状況、同意及び同意の撤回の労働者ごとの記録を決議の有効期間中及びその期間満了後3年間保存すること
関係法令
- 労働基準法 第38条の4
- 労働基準法施行規則第24条の2の3
リーフレット等
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04.労使委員会の決議の届出と周知
企画型を導入するには、所轄労働基準監督署長へ労使委員会の決議の届出が必要です(労働基準法施行規則第24条の2の3)。決議を届け出なければ、企画型の効果は生じません。また、労使委員会の決議は労働者に周知しなければなりません。事業場の対象労働者が決議内容を確認できるよう、適切に周知してください。
また、決議の有効期間の始期から起算して、初回は6か月以内に1回、その後は1年以内ごとに1回、所轄労働基準監督署長に報告を行う必要があります。報告事項は以下のとおりです。
①対象労働者の労働時間の状況
②対象労働者の健康・福祉確保措置の実施状況
③同意および同意の撤回の状況
関係法令
- 労働基準法 第38条の4
- 労働基準法施行規則第24条の2の3
リーフレット等
書式
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05.書類の保管
使用者は、以下の労働者ごとの記録を決議の有効期間中およびその期間満了後3年間保存しなければなりません(労働基準法施行規則第24条の2の3第3項第4号、第71条)。企画型を適正に運用していることを確認できるよう、記録の管理体制を構築してください。
① 適用労働者の労働時間の状況
② 適用労働者の健康・福祉確保措置の実施状況
③ 適用労働者からの苦情処理に関する措置の実施状況
④ 同意および同意の撤回
関係法令
- 労働基準法第38条の4
- 労働基準法施行規則第24条の2の3、第71条
リーフレット等
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