トップ IPO準備企業労務サポート 上場企業として遵守すべき内容 派遣労働者の管理(派遣元)

派遣労働者の管理(派遣元)

労働者派遣については、労働者派遣法にそのルールが定められており、派遣元事業主・派遣先事業主の双方に一定の義務が課されています。
同法は最大で「1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金」もある厳格な法律ですので、内容を十分に理解して対応することが重要です。
また、近年特に注目されている「同一労働同一賃金」は派遣労働者についても適用されるため、法の趣旨に反する労働条件の設定が行われない様、留意しなければなりません。

派遣元での派遣労働者の管理に関してIPO準備企業で法令違反が生じやすいのは以下の点です。法令に則り派遣労働者の管理をしましょう。
 □ 法令に則った派遣元責任者の選任がされていない
 □ 派遣元管理台帳に記載している内容が法令で定められた条件を満たしていない

01.派遣元責任者の選任

派遣元事業主は、派遣元責任者を選任しなければなりません。

【職務内容】

  1. 派遣労働者であることの明示等に関すること
  2. 就業条件などの明示に関すること
  3. 派遣先への通知に関すること
  4. 派遣元管理台帳の作成、記載および保存に関すること
  5. 当該派遣労働者に対し、必要な助言及び指導を行うこと
  6. 派遣労働者から申出を受けた苦情の処理に当たること
  7. 派遣労働者等の個人情報の管理に関すること
  8. 派遣労働者についての教育訓練の実施及び職業生活の設計に関する相談の機会の確保に関すること
  9. 派遣労働者の安全及び衛生に関し、当該事業所の労働者の安全及び衛生に関する業務を統括管理する者及び当該派遣先との連絡調整を行うこと
  10. 前号に掲げるもののほか、当該派遣先との連絡調整に関すること

【選任方法】

事業所等ごとに専属の者を選任しなければなりません。
ここでの専属とは派遣元責任者の業務にのみに従事することではなく、他の事業所等の派遣元責任者を兼任していないことを指します。
選任人数は派遣労働者100人までごとに1人以上選任しなければなりません。
なお、労働者派遣事業に関する知識、理解を一定の水準に保つため、在任中は3年ごとに「派遣元責任者講習」を受講しなければなりません。
(労働者派遣法 第36条、労働者派遣法施行規則 第29条、第29条の2)

関係法令

  • 労働者派遣法 第36条
  • 労働者派遣法施行規則 第29条、第29条の2

リーフレット等

「派遣元事業主の皆様へ  労働者派遣を行う際の主なポイント」

02.同一労働同一賃金への対応

労働者派遣法は、以下の通り、派遣労働者と派遣先に雇用される通常の労働者の間の同一労働同一賃金を規制しています。
<不合理な待遇の禁止(均衡待遇)>
派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する派遣先に雇用される通常の労働者の待遇との間において、当該派遣労働者及び通常の労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはなりません(労働者派遣法 第30条の3第1項)。

<差別的な取り扱いの禁止(均等待遇)>

派遣元事業主は、「職務の内容が派遣先に雇用される通常の労働者と同一の派遣労働者であって、当該労働者派遣契約及び当該派遣先における慣行その他の事情からみて、当該派遣先における派遣就業が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該派遣先との雇用関係が終了するまでの全期間における当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲同一の範囲で変更されることが見込まれるもの」については、正当な理由がなく、基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する当該通常の労働者の待遇に比して不利なものとしてはなりません(労働者派遣法 第30条の3第2項)。

<労使協定方式>

前述の通り、派遣労働者に関する同一労働同一賃金は、「派遣先に雇用される通常の労働者」との待遇比較を行うものです。しかしながら、この方式では派遣先が変わる毎に待遇の見直しが必要となり、処遇条件が不安定となり得ます。
そこで、派遣「元」事業主が労使協定を締結した場合には、その労使協定に沿った労働条件とすることが可能です。
ただし、待遇の内「教育訓練の実施」「福利厚生施設の利用」は派遣先労働者との均衡・均等を図る必要があり、労使協定の対象とすることが出来ません

【協定事項】

  1. 対象派遣労働者の範囲
  2. 次の賃金の決定の方法
    • イ派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額として厚生労働省令で定めるものと同等以上の賃金の額となるものであること。
    • ロ 派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項の向上があった場合に賃金が改善されるものであること。
  3. 派遣元事業主は、前号に掲げる賃金の決定の方法により賃金を決定するに当たつては、派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項を公正に評価し、その賃金を決定すること
  4. 協定の対象とならない待遇と賃金を除く、協定対象派遣労働者の待遇の決定の方法
  5. 派遣労働者に対して教育訓練を実施すること
  6. その他
    • イ 有効期間
    • ロ 協定対象派遣労働者を一部に限定する場合はその理由
    • ハ 特段の事情が無い限り、労働契約期間中の派遣先変更を理由として、協定の対象とするか否かを変更しないこと

(労働者派遣法 第30条の4、労働者派遣法施行規則 第25条の7、第25条の8、第25条の9)

関係法令

  • 労働者派遣法 第30条の4
  • 労働者派遣法施行規則 第25条の7、第25条の8、第25条の9

リーフレット等

03.派遣元管理台帳の作成

派遣元は以下の内容を記載した派遣元管理台帳を派遣労働者ごとに作成し、労働者派遣終了の日から起算して3年間保存しなければなりません。(労働者派遣法 第37条、労働者派遣法施行規則 第30条、第30条の2、第31条、第32条)

  1. 派遣労働者の氏名
  2. 協定対象派遣労働者であるか否かの別
  3. 無期雇用派遣労働者であるか有期雇用派遣労働者であるかの別(当該派遣労働者が有期雇用派遣労働者である場合にあつては、当該有期雇用派遣労働者に係る労働契約の期間)
  4. 60歳以上の者であるか否かの別
  5. 派遣先の氏名又は名称
  6. 事業所の所在地その他派遣就業の場所及び組織単位
  7. 労働者派遣の期間及び派遣就業をする日
  8. 始業及び終業の時刻
  9. 従事する業務の種類
  10. 第30条1項(同条第2項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により講じた措置
  11. 教育訓練(厚生労働省令で定めるものに限る。)を行つた日時及び内容
  12. 派遣労働者から申出を受けた苦情の処理に関する事項
  13. 紹介予定派遣に係る派遣労働者については、当該紹介予定派遣に関する事項
  14. 派遣元責任者および派遣先責任者に関する事項

関係法令

  • 労働者派遣法 第42条
  • 労働者派遣法施行規則 第30条、第30条の2、第31条、第32条

書式