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雇用保険に関する対応

雇用保険は、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに再就職の援助を行うことなど、雇用に関する総合的な機能を果たす制度であるため、業種や規模を問わず、労働者を雇用する事業は全て適用事業となります。
そのため、事業主には、労働保険料の納付各種の届出等の義務を果たすことが求められます。

雇用保険に関してIPO準備企業で法令違反が生じやすいのは以下の点です。法令に則り資格取得等の手続きをしましょう。
 □ アルバイト等の短時間労働者について資格取得手続きをしていない
 □ 使用人兼務役員に対する手続きが適切に行われていない

01.加入対象者

雇用保険の適用事象所に雇用される以下の労働条件のいずれにも該当する労働者の方は、原則として全て被保険者となります。(雇用保険法 第4条、第6条)

  1. 31日以上の雇用見込みがあること
    ※ 具体的には、次のいずれかに該当する場合をいいます
    • 期間の定めがなく雇用される場合
    • 雇用期間が31日以上である場合
    • 雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
    • 雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された実績がある場合
  2. 1週間の所定労働時間が20時間以上であること

関係法令

  • 雇用保険法 第4条、第6条

02.資格取得・喪失

【資格取得】

事業主は、新たに雇用したときなど、労働者が被保険者となったときは、その日の属する月の翌月10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」を事業所を管轄するハローワークに提出しなければなりません。(雇用保険法 第7条・雇用保険法施行規則 第6条)
このとき、以下のいずれかに該当する場合には、労働契約書、労働者名簿、賃金台帳等、被保険者となつたことの事実及びその事実のあつた年月日を証明することができる書類を添えなければなりません

  1. 事業主が新たに適用事業を開始したことに伴う初めての届出
  2. 届出期限を徒過した届出
  3. 過去3年間に当該事業主が不正受給に関連し、返還又は金額の納付を命ぜられたことがある場合やこれから命ぜられる可能性がある場合等がある事業主による届出
  4. 著しい不整合がある届出
  5. 前年度又は前々年度の労働保険料を滞納している事業主による届出
  6. 過去3年間に雇用保険法その他労働関係法令に係る著しい違反があった事業主による届出

この届出は、その事業所の所在地を管轄する労働基準監督署長又は年金事務所を経由して行うことができますが、労働基準監督署長を経由する場合は、様式第2号の2を使用しなければなりません。

【資格喪失】

事業主は、被保険者である従業員が、離職や死亡をしたことにより、被保険者でなくなった場合、その事実があった日の翌日(退職日の翌々日)から起算して10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」を事業所を管轄するハローワークに提出しなければなりません。(雇用保険法 第7条・雇用保険法施行規則 第7条)
また、離職によるときは、資格喪失届に、以下の区分に応じ、以下の書類を添えなければなりません

  1. 原則:雇用保険被保険者離職証明書及び賃金台帳その他の離職の日前の賃金の額を証明することができる書類
  2. 特定受給資格者:(1)に加え、特定受給資格者であること(離職理由)を証明することができる書類

関係法令

  • 雇用保険法 第7条
  • 雇用保険法施行規則 第6条、第7条

リーフレット等

書式

03.保険料率

雇用保険料率は厚生労働大臣が毎会計年度見直しを行っており、厚労省のHPで「雇用保険料率について」と題して各年度分が公表されています。(労働保険の保険料の徴収等に関する法律 第12条4項)

関係法令

  • 労働保険の保険料の徴収等に関する法律 第12条4項

リーフレット等

04.兼務役員の手続き

法人の取締役・監査役・理事等は、雇用関係にないため、原則として雇用保険被保険者となりません
ただし、取締役・監査役・理事等であっても、同時に部長・支店長等の従業員としての身分を有している場合に、その者の就業実態・就業規則の適用状況等から総合的に判断して、労働者的性格が強く雇用関係があると認められる場合に限っては被保険者となります。

この場合は、資格取得のときに雇用保険被保険者資格取得届と併せて「兼務役員雇用実態証明書」を各種確認資料と共に提出しなければなりません。確認資料の詳細については、届出を行うハローワークに確認してください。

【確認資料】

  1. 登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
  2. 役員報酬規定または給与および役員報酬の決定文書
  3. 定款
  4. 就業規則、給与規程
  5. 賃金台帳
  6. 出勤簿またはタイムカード
  7. 労働者名簿
  8. 役員就任時の人事組織図
  9. 役員就任時の株主総会または取締役会の議事録
  10. その他

リーフレット等

書式

05.離職票の発行

退職者が失業給付(基本手当)を受給するためには、ハローワークの発行する離職票が必要となります。そのため、退職者が希望した場合、会社は必ず離職票の発行手続きをとらなければなりません(退職者が発行を希望しない場合や死亡した場合は必要ありません)。
その発行手続きとして、被保険者でなくなった事実があった日の翌日(退職日の翌々日)から起算して10日以内に雇用保険被保険者資格喪失届に「雇用保険被保険者離職証明書」を添えて、事業所(会社)経由で事業所を管轄するハローワークに提出することとなります。
その後、発行された離職票は会社経由で離職者本人に交付されます。(雇用保険法施行規則 第7条、第16条、第17条)ただし、2025年1月20日以降は、本人が希望した場合、会社を経由せずにマイナポータルから直接離職票を受け取ることができます

関係法令

  • 雇用保険法施行規則 第7条、第16条、第17条

リーフレット等