IPO審査においてはコンプライアンスを遵守できる企業であるかが問われます。労務管理において上場企業として遵守すべき基礎的な内容を網羅的に整理しました。自社が適切な認識と対応ができているか一つひとつ確認してください。
-
法定帳簿の整備
法律で調製が義務付けられている帳簿は、記入事項が漏れなく作成されている必要があります。
法定3帳簿と呼ばれる「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」に「年次有給休暇管理簿」が加わった、4帳簿の作成が必要となります。 -
就業規則の整備
常時10人以上の労働者を使用する場合には、作成・届出が義務付けられており、記載しなければならない事項も法律で定められています。
また、就業規則は使用者が一方的に労働条件を定めるという性質のものであり、労務管理の根幹を成すルールですので、十分に整理しておくことが求められます。 -
年次有給休暇の取り扱い
年次有給休暇は、労働者の健康で文化的な生活の実現のために、休日とは別に一定日数の休暇を有給で与えることを定めた制度です。
勤続期間と出勤率で定められた要件を充足した労働者には、法律で定められた日(基準日)に定められた日数の年次有給休暇を付与することが義務付けられています。また、年次有給休暇は原則として労働者が請求する時季に与えなければならないとされています(労働基準法第39条第4項)。 -
社会保険に関する対応
社会保険は国民生活を保障するための公的な保険制度です。広義には雇用保険や労災保険を含みますが、狭義の社会保険として年金と健康保険の制度について説明します。
適用となる事業、対象になる労働者、資格の取得や喪失の手続き等、細かく法令に定められていますので、法令を理解し適切に対応することが求められます。 -
雇用保険に関する対応
雇用保険は、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに再就職の援助を行うことなど、雇用に関する総合的な機能を果たす制度であるため、業種や規模を問わず、労働者を雇用する事業は全て適用事業となります。
そのため、事業主には、労働保険料の納付や各種の届出等の義務を果たすことが求められます。 -
労働保険に関する対応
労働保険とは労災保険と雇用保険とを総称した言葉で、保険給付は両保険で別個に行われますが、保険料の徴収等については労働保険として、原則的に一体のものとして取り扱われています。
労働保険は、農林水産の事業の一部を除き、労働者を一人でも雇用していれば適用事業となります。そのため、事業主は成立手続等の手続きを行い、労働保険料を適切に納付しなければなりません。 -
労働条件の明示
労働条件明示に違反すると、最高で30万以下の罰金が科せられる場合があります。(労働基準法第120条)
また、事実と異なる労働条件を明示してはならず、労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができます。(労働基準法第15条2項・労働基準法施行規則第5条2項)
形式的に明示を行っても、その方法や内容に法的な誤りがあれば、適法に明示したことになはなりません。法律の内容を十分に理解し対応する必要があります。 -
障害者の雇用
すべての事業主に対し法定雇用率を満たす人数の障害者を雇用することが義務付けられています。
雇用人数が変動したことによって、法定雇用率を下回ることが無いように対応すべきことが義務付けられているものであるため、常に法定雇用率を上回る様な人数の障害者を雇用していなければなりません。
特に小規模事業においては、少人数の雇用変動であっても法定雇用率を下回る状況となってしまう可能性が高いため、雇用人数の管理には十分に留意する必要があります。 -
外国人の雇用
国人の雇用には、技能実習生として受け入れる場合や就労可能な在留資格を有する者を雇入れる場合がありますが、いずれも法律で定められたルールに沿って行う必要があります。
不法な就労が行われることが無いよう、就労要件を満たしているか否かを十分に確認する必要があります。 -
派遣労働者の管理(派遣先)
労働者派遣については、労働者派遣法にそのルールが定められており、派遣元事業主・派遣先事業主の双方に一定の義務が課されています。
同法は最大で「1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金」もある、厳格な法律ですので、内容を十分に理解して対応することが重要です。
また、近年特に注目されている「同一労働同一賃金」は派遣労働者についても適用されるため、法の趣旨に反する労働条件の設定が行われないよう、留意しなければなりません。 -
派遣労働者の管理(派遣元)
労働者派遣については、労働者派遣法にそのルールが定められており、派遣元事業主・派遣先事業主の双方に一定の義務が課されています。
同法は最大で「1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金」もある、厳格な法律ですので、内容を十分に理解して対応することが重要です。
また、近年特に注目されている「同一労働同一賃金」は派遣労働者についても適用されるため、法の趣旨に反する労働条件の設定が行われない様、留意しなければなりません。 -
請負・業務委託(受託・受注)
契約名が請負や業務委託であっても、実態として労働契約と判断される場合には、労働関連各法が適用されます。
70歳までの就業確保措置(努力義務)として創業支援等措置が盛り込まれるなど、業務委託形式での働き方は増えてきています。
しかし、本来は労働契約であるものまで業務委託として取り扱えば、自ずと労働関連各法への違反が生じ、大きな問題となります。
また、請負業者の労働者が注文者の指揮命令により働く労働者とみなされる場合には、実質的な派遣事業(偽装請負)として、派遣法にも抵触します。
この様に、労働者性の判断は労務管理上非常に重要ですが、画一的な基準があるものでは無いため、考慮される要素を知り、個別具体的に判断することが求められます。