トップ 人事労務-コラム コラム ハラスメント対策は完璧ですか?課題が山積みならまずはココの再整備から!

ハラスメント対策は完璧ですか?課題が山積みならまずはココの再整備から!

ハラスメント対策は完璧ですか?課題が山積みならまずはココの再整備から!

コラム

公開日

産業保健支援事務所WB

臨床心理士・公認心理師 羽田野 瑛子

 

 全国労働組合総連合が2026年5月末にリリースしたアンケート調査の結果によると、直近3年の間に現職場でハラスメントを「受けたことがある」という回答は21.8%であり、ハラスメントの現場を目撃したことがある(あるいは居合わせたことがある)という回答を含めると6割を超える結果となりました。また、内容としてはパワーハラスメントが85.2%と最多であり、次いでセクシュアルハラスメントが27.2%、カスタマーハラスメントが18.3%と多く、企業内でハラスメント対策が盛んになってきているとはいえ、まだまだ撲滅には至っていないことが浮き彫りとなっています。

 ハラスメント問題は訴訟に発展することも多くあり、訴訟対応コストや賠償責任・企業イメージの失墜・取引先からの信用低下・採用への影響(求職者の敬遠)・従業員の離職率増加など、企業が負うダメージは非常に大きいものとなります。このようなダメージを負わないようにするためにも是非とも撲滅していきたいハラスメント問題ですが、そのためには組織として以下4点の環境が整っていることが望ましいといえます。

①社内のコンプライアンスを統括する組織がしっかりと整備され機能していること

②職場の心理的安全性が担保されていること

③①・②が前提の上で360度フィードバックが実施されていること

④社員・管理職へのアンガーマネジメント研修が実施されていること

 しかしながら、実際にはなかなかそこまで着手できていない企業も多いのではないでしょうか。予算やマンパワーの関係等で上記のような体制整備まで叶わない場合には、せめて④のアンガーマネジメント研修だけでも要点を押さえ社員・管理職らに展開しておきたいものです。そこで今回の記事ではイライラのメカニズム等に触れながらアンガーマネジメントについて紐解きつつ、ハラスメントに繋がりやすい「怒り」の感情との上手な付き合い方についてご紹介したいと思います。

1.アンガーマネジメントとは

 アンガーマネジメントとは1970年代にアメリカで始まった、怒り(イライラ・ムカムカ等)と上手に付き合っていくためのトレーニング方法のことです。私たちにとって喜怒哀楽は誰にでも生じ得るとても大切な感情です。そのどれかを封印してしまうかのような対応をとってしまうと、行き場のなくなった感情は私たちの中でふつふつとし、知らない間にストレスを溜めこみ、極限まで来たところで大爆発してしまう場合もあります。アンガーマネジメントは、“怒りを我慢できる人” や “怒らない人” になれるよう目指すものではありません。怒りのメカニズムを知り、怒る必要があること・ないことを自分自身で見極め、怒りの感情で自分自身が損をしてしまわないようセルフコントロールすることを目指しています。怒りのメカニズムを知り、自分の怒りを自分でまず認識できることがアンガーマネジメントの第一歩となります。

2.そもそも「イライラ」の感情にはどのような意味があるのか?

 今回の記事では怒りという感情に焦点をあてていますが、本来私たちが持つ感情すべてには意味があると考えられており、感情は私たちに大切なことを教えてくれています。

■すべての感情には意味がある

【喜び】

何かを達成し喜びがあった場合、その喜びが、次また頑張ろうと思える動機となる。

【不安】

夜道に不安を覚えた場合、不安だからこそその対処を人は考えることができる(例:なるべく明るい道を通って帰る 等)。不安の感情は上手く危機回避を行うための機能として働く。     

【悲しみ】

大切な何かを失ったときに悲しみがあった場合、そのショックをしっかりと「悲しみ」として表現することで喪失からの回復を助けてくれる機能として働く。

【怒り・イライラ】

何かに対しひどく怒りやイライラを感じた場合、それは私たちに「傷つき」や「被害」を知らせてくれる役割となる。怒りやイライラは、自分を守るための大切な感情として機能している。

 怒りやイライラは私たちに大切なことを教えてくれている感情の1つですが、その気持ちで心が一杯になりすぎたり、その感情にエネルギーを使いすぎたりすると、自分自身の疲弊に繋がります。また、怒りやイライラにエネルギーと時間を使いすぎてしまうと周囲との摩擦やトラブルにも発展しかねません。そうした状況に陥ってしまわぬよう、イライラの背景にある心情や怒りのメカニズムをしっかり把握していきましょう。

3.怒りのコントロールは、イライラが生じるメカニズムの把握とその裏にある私たちの「こころ」を理解するところから!

 私たちの心の中には知らず知らずのうちに出てくる「~しなければならない」・「~すべき」といった考えからくる期待感や欲求があります。それが成就すれば問題ないですが、現実にはいつでもそううまくいくとは限りません。成就しなかったときには不満が生じ、怒りに転じ、外向きのアウトプットでは攻撃や八つ当たりになってしまうこともあります。かといって表出しない場合には、それらの感情で自分自身が傷つき自責的になってしまうことも…。

 私たちは怒りを感じるとき、こころでは様々なことを感じています。場合によっては、「怒り」はあくまで二次的な感情であり、実は自分自身が「傷ついている」ということを知らせてくれるサインかもしれません。ひとは傷ついたときに無意識にその相手を「加害者」と捉え、怒りが発動していきます。また、その他にも、相手への失望感・うまくいかなかったことへの挫折感・分かってもらえなかったという孤独や不安感・こころと身体の疲弊感などからきていることもあります。まずは様々なところから感情が生じているであろうことを知っておきましょう。そして、怒りにも強弱などいろんな種類があるため、強い怒りがないからといって安心しきってしまうのではなく、「弱い怒り」とはどんなものかというところもしっかりと把握しておくと、自分自身のセルフコントロールだけでなく体調管理にも非常に役立ちます。

4.イライラと上手に付き合っていくためのヒント

(1)アグレッシブな言動はNG

 イライラを感じ、「このイライラは相手の行動のせいだ!」と感じたとしても、そのままアグレッシブな言動に出てしまうと、周囲との関係性が崩れ、自分自身の評判を落とすことに繋がる可能性が非常に高くなります。また、そうした言動に出た後「なんであんなことをやってしまったのだろう…」と自己嫌悪に陥ってしまうことも…。自分自身が損をしないためにも、その場の勢いでアグレッシブな言動をとるのはやめましょう。

(2)感じることと、実際に表現する(言動に出す)ことは区別して捉える

 怒りの感情を抱くこと自体は人間としてごく自然な現象であり、いけないことなどではありません。怒りを抱くことがまずいのではなく、問題はそれを感じた際の「表現方法」です。感じた怒りをコントロールしきれずアグレッシブに表現してしまうと責めを負うのは自分自身になってしまうため、イライラを感じたらまずは自分自身を「お疲れ様」と心の中で労った上で、その後の表現方法については時間をおいて検討しましょう(例:議論の場であれば、相手の意見を確認した上で「解決策については後日改めて場を設けよう」などと一旦時間をあける提案をするのも1つの手です)。

(3)イライラには「環境」も関係していることを意識する

 私たちはイライラすると「これは~のせいだ!」とすぐに原因を1つに絞りがちですが、実際には怒りの発生には様々な要因が関連すると考えられています。例えばですが、普段は気にならないようなことでも、うだるような暑さのとき・空腹のとき・疲れているときなどには、ちょっとしたことがつらく感じられてイライラするといった経験はないでしょうか。イライラが生じた際、すべてを相手や自分の性格要因に結び付けるのではなく、不快な環境などがあるかどうかをまずはチェックしその調整を試みることも非常に重要です。

(4)「ただ我慢する」という選択はNG

 感じた怒りをただただ我慢するという選択をとってしまうと、高血圧・冠状動脈疾患・虚血性心疾患等、循環器系の疾患の危険因子になることが明らかになっています。イライラを感じた際は、「ただ我慢する・抑え込む」のではなく、怒りの背景に自分はどんな感情があるのか・どのようなメカニズムでイライラが発生しているのかをまずは振り返るという習慣をつけましょう。

 いかがだったでしょうか。ハラスメント対策に課題を持ちつつも施策をうまく進めることができていない企業もまだまだ多いのではないでしょうか。多田国際コンサルティング株式会社では、こうした課題に対し組織の理解促進や研修の充実・管理職の指導支援などを通じて、施策展開のサポートをしています。社員の心の健康と働きやすさを高めるためにも、既存の研修内容の見直しも含めぜひお気軽にご相談ください。

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